ニュースがわかる「企業のビットコイン保有」。その背景にある目的と知っておきたいリスクを解説

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Dr.X

 元外資系金融機関勤務
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最近、海外だけでなく日本の企業もビットコインを資産として保有し始めた、というニュースを目にする機会が増えたのではないでしょうか。これまで個人投資家のイメージが強かったビットコインを、なぜ今、企業がこぞって財務資産に組み入れているのでしょう。

その背景には、単なる短期的な利益追求だけではない、長期的な戦略と思惑が存在します。

この記事では、企業がビットコインを保有するようになった具体的な理由から、代表的な企業、そして知っておくべきリスクまで、一つひとつ丁寧に解説していきます。読み終える頃には、ニュースの裏側にある経済の新しい動きが、きっとご理解いただけることでしょう。

なぜ今、企業がビットコインを保有するのか?その3つの背景

企業がビットコインの保有に踏み切る背景には、主に3つの理由があります。これらは単独ではなく、相互に影響し合っています。

  • インフレへの備えとしての価値
  • 新たな財務戦略としての選択肢
  • 業界の潮流(FOMO)による後押し

経済のデジタル化が進む現代において、企業が直面する課題と新たな可能性の表れともいえます。一つずつ見ていきましょう。

背景1:“デジタル・ゴールド”としての価値|インフレへの備え

一つ目の背景は、物価が上昇し法定通貨の価値が目減りするインフレへの備えです。ビットコインは発行上限が2,100万枚と定められており、その希少性から「デジタル・ゴールド」とも呼ばれます。このため、将来的な資産価値の保全先として期待されているのです。

背景2:新たな財務戦略の選択肢|資産の多様化

二つ目の背景は、従来の資産だけに頼らない、新たな財務戦略の選択肢として注目されている点です。企業は余剰資金を現金や有価証券で保有するのが一般的でした。そこにビットコインを加えることで、資産を多様化させ、全体のリスク分散を図る狙いが見られます。

背景3:業界の潮流とFOMO(取り残される恐怖)

三つ目の背景として、他社の動向に乗り遅れたくないという心理的な要因、いわゆるFOMOが挙げられます。先進的な企業がビットコイン保有で成果を上げると、追随する企業が現れるのです。これは、新たな市場や技術から取り残されたくないという、経営上の危機感の表れでもあります。

【一覧】ビットコインを保有する世界の主要企業と日本の動向

では、実際にどのような企業がビットコインを保有しているのでしょうか。公に保有を表明している代表的な企業を、下の表で見てみましょう。

企業名 特徴
ストラテジー(旧マイクロストラテジー) 米国 世界最大のビットコイン保有上場企業。財務戦略の核に据える。
マラソン・デジタル・ホールディングス 米国 大手マイニング企業。自社で採掘したBTCを大量に保有。
テスラ 米国 EV大手。一時決済手段として導入し、現在も相当量を保有。
メタプラネット 日本 「日本のストラテジー社」を目指し、急速に保有量を拡大中。

表の通り、米国のストラテジー社が先駆者となり、多くの企業が追随しています。

日本では、まだ海外ほど活発ではありませんが、2024年以降、株式会社メタプラネットが財務戦略として大量保有を表明し大きな注目を集めています。これを機に、追随する企業が現れるかどうかが今後の焦点となるでしょう。

企業がビットコインを保有するメリットとは?

企業がビットコインを保有する背景には、もちろんメリットがあるからです。ここでは、企業が期待する主なメリットを見ていきましょう。

  • 長期的な資産価値の向上への期待
  • 先進性のアピールとブランドイメージ向上

これらは、企業の将来を見据えた、戦略的な判断に基づいているといえます。

メリット1:長期的な資産価値の向上への期待

最大のメリットは、長期的な資産価値の向上に期待できる点です。価格変動は激しいものの、発行上限のある希少性やデジタル資産としての将来性から、長期的には価値が高まると考える企業は少なくありません。これは、企業の資産を将来にわたって守り、増やすための選択肢となり得ます。

メリッ2:先進性のアピールとブランドイメージ向上

ビットコインの保有は、企業が新しい技術や時代の変化に前向きであることを示す、強力なメッセージにもなります。これにより、革新的で先進的な企業であるというブランドイメージを市場や顧客に与えることができるでしょう。株価への好影響や、優秀な人材の獲得につながる可能性も期待されています。

知っておくべき3つのデメリットと潜在的リスク

一方で、企業のビットコイン保有には看過できないデメリットやリスクも存在します。メリットだけに目を向けるのではなく、これらの注意点も理解することが、物事を正しく捉える上で不可欠です。

  • 価格変動(ボラティリティ)の激しさ
  • 法規制や会計処理の不確実性
  • セキュリティと管理体制の課題

主なリスクを3点に絞って見ていきましょう。

リスク1:価格変動(ボラティリティ)の激しさ

最大のリスクは、価格変動、すなわちボラティリティの激しさです。価格が急落した場合、企業は多額の含み損を抱え、決算で損失を計上する事態になりかねません。これは、企業の業績や株価に直接的な悪影響を及ぼす可能性があります。

リスク2:法規制や会計処理の不確実性

ビットコインは新しい資産であるため、法規制や会計基準がまだ発展途上です。今後の規制変更によっては、保有し続けることが難しくなる可能性もゼロではありません。また、会計上の評価方法も複雑であり、企業の財務部門にとって大きな負担となる場合があります。

リスク3:セキュリティと管理体制の課題

デジタル資産であるビットコインは、常にハッキングによる盗難リスクに晒されています。特に企業が巨額の資産を保有する場合、極めて高度なセキュリティ対策が不可欠です。秘密鍵の管理など、専門知識を持つ人材の確保や厳重な管理体制の構築が求められ、相応のコストも発生します。

企業のビットコイン保有は今後どうなる?市場への影響と展望

ビットコインを保有する企業の動きは、今後さらに活発化する可能性があります。特に2024年に米国でビットコイン現物ETFが承認されたことは、多くの企業にとって参入のハードルを下げました。法規制の動向次第ではありますが、企業の参入は市場に大きな影響を与えていくことになるでしょう。

まとめ

今回は、企業によるビットコイン保有の動きについて、その背景からメリット・リスクまでを解説しました。

企業のビットコイン保有は、単なる一時的なブームではありません。それは、インフレへの懸念やデジタル化の進展といった、現代経済が直面する大きな変化に対応しようとする戦略的な動きなのです。

もちろん、価格変動や法規制など、乗り越えるべき課題も多く存在します。今後、この新しい潮流がどのように発展していくのか、引き続き注目していくことが重要でしょう。

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